①遺言書がないときは、どうなるのか。
民法が相続人の相続分を定めています。これを「法定相続」といいます。(例えば、両親、長男、長女の4人家族の父親が亡くなった場合、父親の遺産は、母親が2分の1、長男が4分の1、長女が4分の1に分割されます。)
しかし、「法定相続」は単に相続分の割合を定めているだけなので、具体的に遺産の帰属を決めるためには、相続人全員で遺産分割の協議をする必要があります。(先ほどの例で、母親、長男、長女が協議をして、例えば「すべての遺産は長男に」あるいは「不動産は母親に、預貯金は長男に、その他は長女に」などと決めることができます。)
遺産分割協議は、相続人全員が参加して合意しないといけないので、手間がかかります。また、相続人同士の意見が合わずにトラブルになるケースもあります。
②遺言書があると、遺産分割協議をしなくてもよい。
遺言書のとおりに遺産分割できるからです。
ただし、一定の相続人には、遺留分侵害額請求権というものがあります。(先ほどの例で、父親が「すべての遺産は長男に」という遺言を残して亡くなったとしても、長女は自分の法定相続の半分(つまり8分の1)を長男に請求することができます。このトラブルを避けるには、本当は長男にすべての遺産を残したいと思っていても、「遺産の8分の7は長男に、8分の1は長女に」という遺言も考えておいた方がよいかもしれません。
また、遺言書があっても、相続人全員が納得すれば、遺言書とは異なる方法での遺産分割も可能です。
③遺言書は意思能力(判断能力)がないと書けません。
認知症等で、意思能力(判断能力)がないと認められた方が、遺言書を作成しても無効になります。「もっと死期が近づいてから考えようか。」と思わずに、今から遺言のことを考えてみたらどうでしょうか。
(その2へ続く)